食用油のリサイクルでコスト削減|食品工場の廃油管理最前線

食用油のリサイクルでコスト削減|食品工場の廃油管理最前線

食品工場では、調理工程や揚げ物などで大量の食用油を使用し、その使用後の廃食用油が発生します。この廃食用油を適切にリサイクルすることは、廃棄コストを抑えるだけでなく、環境対策や企業の社会的責任(CSR)という観点からも非常に重要です。

無料回収または有価買取が可能な体制を整えることで、事業者のコスト負担を軽減しつつ、持続可能な資源循環を実現できます。

本記事では、食品工場の事業者向けに、業界動向や具体的なリサイクルの実務、コスト削減につながる管理ポイントを実例とともに解説します。

食用油リサイクルの重要性と業界動向

食品工場で日々発生する廃食用油は、放置すれば処理コストや環境リスクとなります。

一方で、そのリサイクル需要は近年増加しており、燃料(SAF・BDFなど)原料や工業用途、飼料用途としての用途拡大が見られます。これにより、環境貢献と事業コスト削減を両立できる好機が生じています。

以下に、まず廃食用油リサイクルがなぜ食品工場にとって重要か、そして日本国内でどの程度の発生量と需要・利用構造があるか、最新のデータをもとに明らかにします。

環境負荷軽減とSDGsへの貢献

廃食用油を再資源化することで、CO₂排出を大幅に削減できます。

例えば、店舗で出る廃食用油を100%原料としたSAF(持続可能な航空燃料)は、原料収集から燃焼までのライフサイクル全体で従来の航空燃料と比べて約80%のCO₂排出削減が可能だという報告があります。

また、リサイクルされた油が資源循環の一翼を担うことで、SDGs(特に目標12:つくる責任・使う責任、目標13:気候変動対策)への貢献が期待できます。事業者がこうした取り組みを推進すれば、企業イメージの向上や取引先からの評価アップにもつながります。

食品工場における廃食用油の発生量

全国油脂事業協同組合連合会によると、日本全体での食用油消費量は年間約234万トンで、そこから生じる廃食用油の発生量は約52〜54万トンと推定されています。このうち、外食業・食品産業などの事業系がかなりの割合を占めています。

また、家庭系の廃食用油も年間で約10万トン発生していると見られていますが、回収率が低く、有効活用されていないものが多い現状です。

廃食用油のリサイクル方法と再資源化の流れ

食品工場から発生する廃食用油は、そのまま廃棄すると環境負荷や処理コストにつながります。しかし、適切に回収・精製することで、燃料や資源として再利用できる仕組みが整っています。ここでは、主なリサイクル方法と再資源化の流れを解説します。

廃食用油の主なリサイクル方法

廃食用油のリサイクル先として、近年最も注目されているのが持続可能な航空燃料(SAF)です。従来の化石燃料に比べて最大80%のCO₂排出削減効果があるとされ、国内外で実証が進められています。

その他にも、飼料や肥料の原料として再利用されるケースが多く、油かすは動植物の成長促進に役立ちます。また、化学的に加工することでバイオプラスチックの原料としても活用され、幅広い産業分野で資源循環に寄与しています。

廃食用油の回収から再資源化までのプロセス

食品工場で使用済みとなった廃食用油は、専用容器で保管された後、専門業者によって無料回収または有価買取されます。その後、濾過や脱水といった精製工程を経て、不純物を除去します。最終的に、燃料や飼料原料、化学製品の素材などに製品化されます。

この一連の流れは、以下のように整理できます。

  1. 回収:専用容器で保管→廃油回収業者が引き取り
  2. 精製:過・脱水・中和で不純物を除去
  3. 再資源化:SAF、飼料、肥料、プラスチック原料に加工

無料回収と有価買取の仕組み

廃食用油は、事業者の負担なく無料回収や有価買取が可能です。この仕組みにより、食品工場は処理費用を抑えつつリサイクルに参加できます。

食品工場が取り組むべき廃食用油管理のポイント

廃食用油を効率的にリサイクルにつなげるためには、食品工場側での管理体制が欠かせません。以下に実務で重要なポイントを整理します。

ポイント①:保管・分別の徹底

リサイクルの品質を維持するためには、異物混入を避ける工夫が必要です。油に水分や食品残渣が混じると、精製効率が低下します。また、揚げ油と調理油など種類ごとに分別して保管すると、回収後の処理がスムーズになり、再資源化の精度が向上します。

ポイント②:定期的な回収体制の構築

リサイクルを安定的に継続するためには、定期回収の仕組みを導入することが重要です。

一定量が溜まってから回収するのではなく、定期スケジュールを設定することで、工場内の保管スペースを効率的に使えます。さらに、品質が劣化する前に処理できるため、再資源化の効率も高まります。

ポイント③:信頼できる回収業者の選定

回収業者を選ぶ際は、無料回収や有価買取に対応しているかを必ず確認しましょう。透明性の高い処理体制を持つ業者を選定することで、コスト削減と安定供給の両立が可能になります。

食用油リサイクルがもたらすコスト削減効果

食品工場における廃食用油のリサイクルは、単なる環境対策にとどまらず、直接的なコスト削減効果をもたらします。

まず、従来必要だった廃棄処理費用を削減でき、処理業者への支払い負担を軽減できます。さらに、無料回収や有価買取の仕組みを活用すれば、廃棄物コストがゼロまたは利益化に転じる場合もあります。

加えて、再資源化に積極的に取り組むことで、CSR(企業の社会的責任)の評価向上や取引先からの信頼獲得にもつながります。これらの副次的メリットは、結果として事業全体のコスト最適化とブランド価値向上に直結します。

廃食用油リサイクルは食品工場の競争力強化につながる

これまで解説してきたように、廃食用油リサイクルは、廃棄コスト削減・処理費用の低減・CSR評価向上といった多面的なメリットを食品工場にもたらします。

適切な管理と信頼できる回収業者との連携によって、事業者は環境貢献とコスト削減を同時に実現できます。さらに、廃食用油は今後、持続可能な航空燃料(SAF)といった次世代エネルギーの原料として活用が進む見込みです。

食品工場がいち早くリサイクル体制を整えることは、単なるコスト対策にとどまらず、将来の競争力強化にもつながります。

\ この記事の著者 / 関口 純一

[株式会社関口油脂 代表]

関口 純一

Sekiguchi Junichi

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