揚げ物や炒め物を提供する飲食店にとって、廃食用油の処理は避けて通れません。そのまま廃棄すると環境負荷が高く、法令違反にもつながる恐れがあります。
しかし、適切な処理とリサイクルを行えば、廃食用油は「再生資源」として新たな価値を生み出します。
今回は、飲食店が実践できる廃食用油の処理方法と再資源化のポイントを紹介します。
なぜ飲食店の廃食用油処理が重要なのか
飲食店で発生する廃食用油は、下水に流すと油膜が発生し、悪臭や排水管の詰まりの原因になります。
EUの公式サイトにも、”Waste oils are considered hazardous waste and have some dangerous properties. One litre of waste oil can contaminate one million litres of water.”(1リットルの油が約100万リットルの水を汚染するとされ、環境への影響は深刻です)と記載されています。

出典:EU・欧州委員会
さらに、廃棄物処理法により、不適切な廃棄は罰則対象となる場合もあります。つまり、適切な処理は「環境保護」と「法令遵守」の両面で不可欠です。
廃食用油の環境リスクと法規制
飲食店から出る油を排水に流すと、浄化槽や下水処理場で処理しきれず、河川や海に流出します。油分が酸化して悪臭や水質汚濁を引き起こすため、自治体では回収業者による適正処理を求めています。
栃木県でも、事業系廃食用油は一般ゴミとして廃棄できません。
廃食用油処理の基本フロー
飲食店が行う処理の流れは次のとおりです。
- 使用済み油を冷却・濾過し、異物を除去
- 容器に保管し、専門業者に引き渡し
- 業者が再生燃料や飼料原料などに再資源化
飲食店が選べる廃食用油リサイクル手法
飲食店にとって「処理コストを抑えながら適正に処理する」ことが最重要です。
現在は、無料回収や有価買取など、コストをかけずに再資源化できる方法が主流になっています。
無料回収サービス利用のポイント
地域の廃油業者やリサイクル企業が、飲食店から定期的に無料で回収を行います。油量が少なくても対応可能な業者も増えており、回収容器を無料提供するケースも多いです。
ただし、異物や水分が混入している油は再利用できないため、保管前に必ず確認が必要です。
有価買取サービスを活用する方法
油の品質や量によっては、有価買取が可能なケースもあります。
例えば、天ぷら店やファーストフード店のように油の使用量が多い店舗では、キログラム単位での買取価格が設定されることもあります。買取価格は時期や油種によって変動しますが、再資源化需要の高まりで安定傾向にあります。
自店舗での簡易活用
一部の飲食店では、廃食用油をバイオディーゼル燃料(BDF)やボイラー燃料として活用しています。専門業者が店頭で油を精製し、再利用できる仕組みも登場しています。
ただし、設備投資や管理体制が必要なため、導入前に費用対効果を検討することが大切です。
成功事例とコスト/効果比較
廃食用油の再資源化により、コスト削減やCSR(社会的責任)向上につながった飲食店もあります。
実際の飲食店での導入例
多くの飲食店では、無料回収を利用することで処理コストの削減が実現しています。
例えば、月30リットル前後の廃食用油を回収に回すだけで、年間数万円規模の処理費削減が可能です。
関口油脂のように再生燃料化まで一貫対応する業者を選べば、CO₂削減や環境配慮のPRにもつなげやすいでしょう。
廃食用油リサイクルで注意すべき点
廃食用油を有効活用するためには、品質管理と業者選びが欠かせません。
品質管理と水分混入対策
再利用できる油の条件は「水分・異物の混入がないこと」です。
回収用タンクを常に清潔に保ち、水が混ざらないよう注意します。特に、厨房清掃時に洗剤や食品残渣が混ざると再資源化できなくなります。
契約前の確認事項と信用性チェック
業者を選ぶ際は、再資源化先や処理ルートが明確であるかを確認します。
無料回収や有価買取をうたう業者の中には、違法投棄などのトラブルも報告されていますので、自治体の登録リストや許可番号を確認すると安心です。
栃木県でしたら、以下の「産業廃棄物処理業者名簿」より、登録リストや許可番号を確認できます。
廃食用油の安全衛生対応
油の保管は、密閉容器・直射日光を避けた場所で保管することが基本です。
また、回収までの間にカビや臭気が発生しないよう、しっかりとフタをして保管しましょう。
持続可能経営へのステップ
廃食用油のリサイクルは、単なる「廃棄物処理」ではなく、持続可能な経営戦略の一部です。
無料回収や有価買取を活用することで、コストをかけずに環境負荷を削減できます。
飲食店として「資源を循環させる意識」を持つことが、地域社会からの信頼獲得につながります。
今こそ、廃食用油を「ゴミ」から「資源」へと変える取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
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