宇都宮餃子で有名な栃木県は、実は豚肉の一大産地でもあります。
餃子の材料として欠かせない豚肉の生産は地域の食文化を支えていますが、その一方で「食肉残渣」と呼ばれる副産物も発生します。これらは適切に処理され、再び社会に循環させる取り組みが進んでいます。
本記事では、栃木県における食肉残渣リユースの現場をデータや具体事例とともにご紹介します。
栃木県は豚肉の一大産地
栃木県は、野菜や乳用牛と並んで畜産が地域の基幹産業になっており、豚肉も主要な位置を占めています。2025年の農林水産省の統計によれば、畜産(県内の農業産出額)の半分近くを畜産が占め、豚だけでも全体の9.4%と重要な割合を占めています。

※農林水産省「令和7年版 栃木県の農林水産業の概要」を基に作成
特に宇都宮餃子の存在は地域需要を支え、飲食や食品加工における豚肉の利用を後押ししてきました(豚肉の生産・出荷は地域の食文化と密接に結び付いています)。このように大量に扱われる畜産の副産物として、可視化されにくい「食肉残渣(脂身・端材など)」が継続的に発生している点に注意が必要です。
食肉残渣とは何か
食肉残渣とは、食肉処理や加工の過程で生じる脂身・骨・皮・内臓・端材などの総称です。量的には加工規模や流通量に比例して発生し、適切な処理や再資源化の有無が地域の環境負荷や経済循環に影響します。
食肉残渣の種類と発生源
食肉残渣には主に次のような種類があります。
豚や牛の脂身(生脂)・端材・骨・皮・内臓など。発生源は大きく分けて「食肉加工工場(解体・加工場)」と「食品加工業者(餃子や惣菜を作る工場)」、さらに食肉を多く扱う飲食店や給食センターなどの事業所です。
加工工程では切り落とされる部位やトリミングの端材が定常的に出るため、継続的な回収ルートの確保が事業運営では重要になります。近年は廃棄ではなく油脂や工業原料として再資源化する動きが進み、産業側でも受け皿が整いつつあります。
食肉残渣が抱える課題
食肉残渣を単に廃棄すると、悪臭発生・衛生リスク・処理コストの増加といった環境・経営上の問題を招きます。特に高温多湿な季節は腐敗が早く、周辺住民への影響や法令上の処理義務(適正処理)が問題となることがあります。
さらに、焼却や埋立といった処分法は資源の損失に繋がるため、環境負荷が大きくなります。したがって地域で発生した食肉残渣を食品原料や工業用油脂などに再資源化して循環させることが、環境負荷低減と地域経済の両面で合理的な選択肢になるのです。
栃木県で進む食肉残渣のリユース
栃木県内でも、食肉残渣をただ廃棄物として処理するだけではなく、資源として再活用する取り組みが進んでいます。特に脂身や端材などから油脂成分を取り出して再利用する流れは、地域産業と環境双方にメリットをもたらします。
以下で、関口油脂のプロセスを例にして、具体的な再資源化の仕組みを解説します。
油脂への再資源化プロセス
関口油脂は、牛・豚の生脂や端材などの食肉残渣を買取り、加工処理・販売まで一貫して手がけています。その流れはおおまかに次のとおりです。
- 回収・引き取り:食品工場、惣菜加工場、スーパーマーケットなどから生脂・端材を定期または問い合わせベースで回収
- 前処分・分離:回収された残渣から水分や異物を除き、固形物や油分を分離する工程に
- 精製処理:分離された油脂を生成して品質を整え、用途に応じたグレードに分級
- 製品供給:得られた精製油脂は、食品原料、各種工業製品(潤滑油・素材用油脂など)に供給
このプロセスによって、単なる廃棄物だった食肉残渣が、価値ある資源として地域に戻ります。関口油脂は東日本全域を回収対応エリアとし、栃木県内の事業者も対象に含めています。
この地域内循環が成立すれば、輸送コスト・環境負荷を抑えつつ、地元産業の原料供給にも寄与できる構図になります。
食肉残渣の活用方法
食肉残渣は、原料をランクや種類分けした後に加熱・精製加工をおこない油脂(脂肪)を抽出します。そうして加工された食肉残渣は大きく2つに分かれます。
- 脂肪
- 固形物(タンパク質分や固形の有機成分)
脂肪は、豚の脂であれば精製ラード、牛の脂なら食品原料のほか、工業用油などの原料になります。一方の固形物は、ペットフードや肥料として利用します。
上記のような流れが、地域資源の還元循環として形をなします。循環の輪が広がれば、廃棄費用削減や資源利用効率の向上にも貢献します。
栃木県の循環型社会を支える食肉残渣リユース
食肉残渣リユースの取り組みは、単なる廃棄削減策ではありません。
地域資源を地域内で循環させる仕組みを築くことで、環境負荷の低減・物流コストの抑制・地元産業の資源確保という三重のメリットが得られます。企業視点では、廃棄物を「コスト」ではなく「資源」と捉える発想が、サステナビリティ経営や企業価値向上の一要素となります。
さらに、食肉残渣由来の素材が地域の飼料・工業用途に戻れば、輸入依存を緩和できる可能性も出てきます。地域住民・企業・行政という三者が協働すれば、廃棄物の削減と資源活用が共存する社会を実現できるでしょう。
これからの時代、地域産業と環境保全を両立させる仕組みとして、食肉残渣リユースはますます注目されています。
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