事業活動で発生する廃食用油は、そのまま廃棄すると環境負荷が高く、処理にも手間がかかります。しかし、適切に回収しリサイクルすれば、燃料や原料として再利用できるので、企業の環境貢献やブランド価値向上につながります。
本記事では、廃食用油リサイクルの仕組みや方法、メリット、回収のポイントまでわかりやすく解説します。
『廃食用油リサイクル』とは
廃食用油とは、揚げ物や炒め物などで使用し、使用後に不要となった食用油を指します。飲食店、食品工場、ホテル、給食施設など、さまざまな事業で日常的に発生する副産物です。
この廃食用油は、適切に処理すれば再生可能な資源として利用できることから、近年は廃棄せずにリサイクルする動きが広がっています。
再利用の用途は主に、乗り物の燃料や畜産向けの飼料、プラスチック原料、肥料、石鹸、潤滑油といった多岐にわたり、環境保全や循環型社会の構築に貢献します。廃食用油リサイクルは、事業者が積極的に取り組むべき重要な環境対策のひとつです。
廃食用油リサイクルの主な方法
事業で発生した廃食用油は、いくつかの方法で再利用されます。その代表的な3つのリサイクル方法をご紹介します。
①バイオディーゼル燃料への加工
廃食用油を精製し、バイオディーゼル燃料(BDF)として利用する方法です。
BDFは軽油代替燃料としてディーゼルエンジンで使用でき、CO₂排出削減効果が期待されます。再生可能エネルギーとして注目されており、運送業や公共バスの燃料として活用される事例も増えています。化石燃料依存を減らす手段として、国内外で導入が進んでいます。
②飼料・肥料原料としての再利用
廃食用油は、家畜飼料や有機肥料の原料としても利用されます。油のエネルギーを栄養源として活用することで、飼料の品質向上や生産効率化に貢献します。また、有機肥料に混合することで、土壌改良や作物の生育促進に役立ちます。
これらの用途では、品質管理や異物混入防止が特に重要であり、衛生面の基準を満たした油のみが再利用されます。
③工業製品の原料化
廃食用油は、プラスチック原料、石鹸、塗料、潤滑油などの工業製品にも再利用されます。油脂成分を加工して原料化することで、石油由来原料の代替になり、環境負荷低減につながります。
特に石鹸や洗剤は、天然由来成分を好む市場ニーズに合致し、エコ製品として付加価値を生み出します。産業界においても、廃食用油の活用は資源循環の重要な一端を担っています。
廃食用油リサイクルのメリット
廃食用油のリサイクルには、環境面だけでなく企業経営にもプラスとなる効果があります。
メリット①:環境負荷の軽減
廃食用油を再利用すれば、廃棄物の焼却や埋立処分に伴うCO₂排出を抑制できます。また、化石燃料や石油化学製品の使用量を削減できるため、地球温暖化防止にも貢献します。環境負荷を下げる取り組みは、企業の社会的責任(CSR)としても評価されます。
メリット②:企業イメージ向上
廃食用油リサイクルは、SDGsの達成やCSR活動の一環として社外にアピールできる点も大きなメリットです。
環境意識の高い取引先や消費者からの評価が高まり、企業ブランドの向上につながります。実際に、環境活動に積極的な企業はメディア露出の機会も増える傾向があります。
メリット③:廃食用油の無料回収によるコスト削減
廃食用油は、産業廃棄物として処分すると費用がかかる場合がありますが、無料回収を利用することで処理コストを削減できます。
回収からリサイクルまで一貫して行う業者に依頼すれば、事業者側の負担を軽減しつつ、環境保全にも貢献可能です。安定した回収ルートを確保することで、廃棄物管理も効率化されます。
廃食用油リサイクルの回収方法
効率的かつ安全にリサイクルを行うためには、適切な回収方法の選択が重要です。
方法①:無料での回収
回収業者が指定容器を設置し、定期的に引き取る方式が一般的です。
事業者側は廃食用油を容器に移し替えるだけで、手間がほとんどかかりません。保管時は異物混入や水分混入を避ける必要があります。
方法②:有価買取が可能なケース
大量に発生し、かつ水分や異物がほとんど含まれていない廃食用油は、有価買取の対象となることがあります。飲食チェーンや食品工場など、まとまった油を安定供給できる事業が該当しやすいです。
牛肉や豚肉の脂身・生油などが有価買取の対象になるケースもあります。
廃食用油リサイクルの注意点
リサイクルを成功させるには、油の品質保持が不可欠です。
調理後は速やかにろ過し、水分や異物を除去します。保管容器は密閉できるものを使用し、直射日光や高温多湿を避けて保管しましょう。
また、産業廃棄物処理に関する法令や自治体の規制を確認し、遵守することが重要です。適切な管理は、リサイクルの品質向上と買取価格の維持にも直結します。
廃食用油を資源に変える取り組み
廃食用油は、正しい方法で回収・リサイクルすれば、環境保護、企業価値向上、経済的メリットの3つをもたらす貴重な資源です。
事業者にとっては、廃棄物の削減だけでなく、持続可能な経営の実現にもつながります。今後、再生可能エネルギーや循環型社会の重要性が高まる中で、廃食用油リサイクルは欠かせない取り組みとなるでしょう。
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