使用済み油の回収で防げるリスクと法的な対策

使用済み油の回収で防げるリスクと法的な対策

飲食店や食品工場など、日々大量に発生する「使用済み油」。

その処理を何となく自己流で行っていると、思わぬトラブルを招く可能性があります。排水管の詰まりや悪臭、衛生上の問題、さらには法令違反に発展するケースも少なくありません。

こうしたリスクを避けて、安定した店舗運営を続けるためには、信頼できる使用済み油の回収業者を活用することが大切です。今回は、知らないと損する「使用済み油のリスク」について具体的に解説します。

使用済み油が抱える3つの大きなリスク

使用済み油は、ただ保管しておくだけでもさまざまなリスクがあります。

特に食品業界では、店舗の衛生状態や営業継続に関わるトラブルへ直結するケースもあります。以下3つの代表的なリスクを押さえておきましょう。

リスク①:排水管の詰まり・悪臭

使用済み油をそのまま排水口に流すと、排水管の内部で固まり、詰まりや逆流を引き起こす原因になります。また、油分が蓄積された配管からは腐敗臭が発生して、店内全体に悪影響を及ぼします。

清掃や修繕には高額な費用がかかることもあり、定期的な回収と正しい処理が不可欠です。

リスク②:害虫・衛生面の問題

密閉せずに保管された使用済み油は、コバエやゴキブリなどの害虫を呼び寄せる原因となります。また、高温多湿な厨房では油が酸化・腐敗しやすく、衛生面でも問題視されることがあります。

特に食品衛生法や保健所の検査では、保管状態をチェックされることもあるので注意が必要です。

リスク③:消防法違反の危険性

意外と知られていないのが、「油の自然発火」による火災リスクです。使用済み油が高温の場所に放置されると、自然発火する可能性があり、過去には飲食店での火災事例も報告されています。

消防法では一定量以上の廃油を保管する場合、届出が必要とされる地域もあり、正しい回収管理が法令遵守の一環となります。

知らないと損する法令と義務

使用済み油の処理は、単に「捨てる」「回収してもらう」というだけでは済みません。事業者として守るべき法令があり、違反すれば罰則の対象となるケースもあります。以下では、法的な取り扱いと自治体による規定について確認しておきましょう。

食品リサイクル法と事業系廃棄物の扱い

「食品リサイクル法」では、「食品関連事業者」から出る使用済み油は事業系廃棄物として扱われ、再資源化や適正処理が義務づけられています。

食品関連事業者
食品製造業・加工業食品卸売業・小売業飲食店
食品メーカーなど各種食品卸、コンビニ、スーパー、八百屋、魚屋、百貨店などの小売業レストラン、ホテル、食堂、旅館、レストラン船、結婚式場など

現在では、この法律の改正も検討されており、再生利用率の向上が求められているのです。

違法に廃棄した場合は、行政指導や改善命令の対象になることもあるため、許可業者への委託が安心です。

自治体ごとのルールや罰則の実例

使用済み油の扱いは、各自治体で定められた条例や指導要綱に従う必要があります。

たとえば、東京都では「清掃工場で処理できない油を排出しないように」と明記されており、違反があった場合には、事業者名の公表や罰金が課せられることもあります。

地方自治体によっては、産業廃棄物処理委託契約書の締結が義務となっている場合もあり、地域ごとのルールを把握することが重要です。

業種別・使用済み油の管理と回収ポイント

業種ごとに使用済み油の排出量や保管方法、回収頻度は大きく異なります。自社の業態に合った管理体制を整えることで、トラブルを防ぎつつ効率的な運営が可能です。ここでは、代表的な業種に分けてポイントを解説します。

飲食店とホテル:回収頻度と保管容器の注意点

飲食店やホテルの厨房では、日々の調理で使用済み油が発生します。量は比較的少ないものの、回収までの間に衛生状態を保つ必要があります。密閉可能な専用容器に保管して、異物や水分が混ざらないように管理することが基本です。

回収頻度は月2~4回が目安で、繁忙期には柔軟にスケジュールを見直すことも大切です。

食品工場・スーパー:大量処理時の注意と委託基準

食品加工工場やスーパーの総菜部門では、日常的に大量の油が発生します。この場合、保管場所の安全性や火災対策がより重要になります。回収業者との契約書の締結、排気量の記録管理、廃油タンクの設置などが求められます。

食品リサイクル法に則り、定期的な回収と再資源化の実績報告が必要になるケースもあるため、専門業者との連携が不可欠です。

安心できる回収業者の見極めは?

多くの業者が存在する中で、どの業者を選ぶかは非常に重要です。安易に価格だけで決めてしまうと、法令違反やトラブルにつながる恐れがあるからです。信頼できる回収業者の選び方の基本をご紹介します。

確認①:許認可・契約書

まず確認すべきは、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しているかどうかです。使用済み食用油は再利用可能な資源として扱われるため産業廃棄物にはあたりませんが、収集運搬業の許可を取得している業者の方が、より適切な取り扱いができていると言えます。業者のWebサイトに記載があるか、見積もり時に許可番号を明示してもらえるかもポイントです。

確認②:再資源化実績・回収証明の有無

優良な業者は、回収後の油がどのように再利用されるかも情報公開しています。バイオ燃料への再資源化やリサイクルの流れを明示している企業であれば、環境配慮や企業責任への意識も高いと判断できます。

また、必要に応じて「回収証明書」を発行してくれる業者であれば、社内の監査対応や行政提出書類にも対応しやすくなります。

持続可能な店舗の運営は「油の管理」から始まる

使用済み油の適切な回収と管理は、法令順守だけでなく、衛生・安全対策にも直結する重要な取り組みです。トラブルや無駄な出費を防ぎつつ、企業としての信頼性や社会的価値も高められます。

日々の業務に追われがちな今だからこそ、油の扱いを見直すことが、持続可能な店舗運営の第一歩になります。

\ この記事の著者 / 関口 純一

[株式会社関口油脂 代表]

関口 純一

Sekiguchi Junichi

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